京都大学名誉教授の森谷敏夫先生は、毎日7時間の睡眠をとり、毎朝しっかり食べてから出勤。筋肉のエキスパートが実践する「睡眠」と「食」の習慣には、きっと学ぶべき理由がありそうです。
第3回 まとめ
- 筋肉は、寝ている間に育つ
- 朝食を抜くと、確実に太る!
- タンパク質はしっかり。脂質は摂りすぎに注意
筋肉は寝ている間に育つ
――「睡眠」って、筋肉に関係するんですか?
森谷塾長 :
もちろん、大いに関係があります。寝ているときに放出される「成長ホルモン」は、筋肉のタンパク質合成を促進します。
筋肉は寝ている間に育つ。だから筋トレをするなど、筋肉を傷つけた日はとくに、しっかり睡眠をとらなければなりません。筋肉を効率的に鍛えるには、栄養と同じくらい睡眠は大事。
睡眠時間は7時間が理想だといわれていますが、いま世界で一番睡眠時間が短いのが、日本人の若い女性です。運動しない、十分な栄養も摂ってない、睡眠も足りてない……。これではよい筋肉が育つわけがない。
筋肉が減れば、体脂肪率が増えていき、隠れ肥満へまっしぐら。
――睡眠不足が、肥満につながるんですね。
森谷塾長 :
それだけじゃないですよ。睡眠不足は日本人女性が要介護になる最大の要因「認知症」も引き起こしてしまう。
脳内の老廃物には、アルツハイマー型認知症の原因物質「アミロイドベータ」というタンパク質が含まれています。アミロイドベータは、脳が休んでいるとき、つまり睡眠時にしか浄化できません。なのに、十分な睡眠時間がとれないと、どうなるか。
――脳内に、老廃物のアミロイドベータがどんどんたまっていきます。
森谷塾長 :
すると、認知症の発症リスクが高くなる。睡眠が足りていない人は、すぐに生活習慣を改める努力をしてください。
朝食を抜くと、確実に太る!
森谷塾長 :
あとは食事ですね。毎日、朝ごはんを食べていますか?
――毎日はちょっと……。前の日が遅いときは、食べないこともあります。
森谷塾長 :
あのね。朝食を摂らないと、体脂肪が増えて確実に太りますよ。
人間の身体は1日3回以上食べないと、代謝が落ちるようになっている。なかでも大事なのが朝食で、何も食べないなんて信じられません。
脳は寝ているときも糖質をエネルギーとして使います。朝起きたときは、血糖が足りない飢餓状態なのに朝食を抜いてしまうと、身体は自動的に「省エネモード」にシフトします。エネルギー不足なんだから仕方がない。代謝は上がらず、体温は低いまま。
そしてお昼にドカ食いをすると、ここぞとばかりにエネルギーをたくわえようとして、脂肪を大量につくる。だから、朝食を抜くと太るんです。
――せっかく筋トレをしても、睡眠不足だったり朝食を抜いたりしたら、台無しなんですね。
森谷塾長 :
そう。睡眠と食事は、ある意味、筋トレよりも重要なことかもしれません。
あと、筋肉をキープするという観点でいうと、簡単に済ませがちな朝食は、タンパク質不足になりやすいので、気をつけたいところです。毎食、最低20gのタンパク質を摂らないと、いまある筋肉を維持できませんから。
筋肉を効率よく育てるためには、「炭水化物60%、タンパク質20%、脂質20%」の食事を3食に分けて摂る。その上で筋トレするのがベストです。
タンパク質はしっかり。脂質は摂りすぎに注意
――ダイエットをするときも、「炭水化物60%、タンパク質20%、脂質20%」の食事バランスは、崩さないほうがいいんですか?
森谷塾長 :
そうですね、基本比率は変えないほうがいいでしょう。ただし、日本人はタンパク質の摂取量が圧倒的に足りていないので、意識的にタンパク質を摂るようにすることと、揚げ物や洋菓子など、脂質の多い食べ物は食べすぎないように心がけてください。
脂質そのものは私たちの身体にとって必要不可欠な栄養素ですが、現代人の食生活は、ほうっておいても脂質過多になっていますから。
炭水化物(糖質)は減らさず、タンパク質を多めに、そして極力、脂質は減らす。このことを忘れずにいてください。
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