6割の人が仕事に関する強いストレスを感じている
職場で働くみなさん、最近ストレスを感じていますか? 厚生労働省が5年に1度行う『労働者健康状況調査』によると、「仕事や職業生活に関する強い不安、悩み、ストレスがある」という労働者は近年、約6割で推移しています。
ストレスを抱えながら労働を続けていると、心の負担が増え続け、うつ病などの心の病のリスクも高まってしまいます。心の病になると、継続的な治療や休職療養などが必要になる場合もあります。この状態を予防するためにも、自分の健康を自分で守る――つまり心の「セルフケア」を常に意識する必要があるのです。
心のセルフケアのポイントは「ストレスへの気づきと対処」
厚生労働省では平成12年に「事業場における労働者の心の健康づくりのための指針」を策定し、(1)セルフケア、(2)ラインによるケア、(3)事業場内産業保健スタッフ等によるケア、(4)事業場外資源によるケアという職場における4つのメンタルヘルスケアの推進の重要性を発表しました。
なかでも、労働者自身が実行する「セルフケア」については、自分のストレス状態に気づき、ストレス対処への知識を持ち、実施することが必要であるとされています。
このセルフケアの有効な手段の一つに、「ストレスチェック」の利用があります。ストレスチェックとは、労働安全衛生法により従業員50人以上の事業場に年に1回以上義務化されている制度(平成27年12月施行)です。このチェック結果から自分自身のメンタルヘルスの状態を知り、状態によっては産業医との面談を行うことが望ましいとされています。
自覚しにくいストレスはストレスチェックで!
セルフケアの実行にあたりストレスチェックの利用が勧められているのは、ストレス状態は自覚しにくいことと関係しています。自分では「まだ大丈夫」と思っていても、長時間残業や過剰なストレス下で働いていると心身の健康は既に限界を超え、うつ病などの心の病に罹患している可能性もあるのです。
過労状態が続いていくと心身が過剰なストレスに適応し、無理が効いてしまう時期があります。これを「抵抗期」と呼びます。抵抗期には心身が過剰に興奮しているため、睡眠時間を削っても無理が効いて頑張れてしまうのです。
しかし、その後急速に抵抗力が低下し、うつ病などの心の病が発症することも少なくはありません。したがって、ストレスチェックなどを利用して定期的に自分の心の状態を把握する習慣は、大切なことなのです。
眠る・話す・気分転換…「N・H・K」を意識してストレスをセルフケア!
セルフケアには、ストレスチェックなどで自分のストレス状態に気づくとともに、ストレスへの対処を積極的に行っていくことも重要です。ストレスケアにはたくさんの方法がありますが、メンタルヘルス不調に陥らないためにお勧めしたいのが、「N・H・K」の実践です。各ポイントについて解説しましょう。
■N…「眠る」
1日に6時間以上はぐっすり眠ることを心がけましょう。ちなみに、1日8時間労働の人が1日4時間を超える残業を続ける月が続くと、月の時間外労働時間が80時間を超える月が増えます。
複数月にわたって時間外労働時間80時間が続くことを「過労死ライン」と呼びますが、このラインを超えると、1日6時間の睡眠時間を切る可能性が高くなり、脳血管疾患や心疾患の発症リスクが高くなるとされています。
残業が多い方は、睡眠時間が6時間以上とれているかどうか、よく振り返ってみましょう。
■H…「話す」
少しでも「いつもと違う感じ」を自覚したときには、仕事に関わるキーパーソン(上司など)に相談したり、周囲の人やストレスの専門家(産業医、カウンセラー等)と話すようにしましょう。
上司や周囲の人と話すことによって、その人のストレスサインに気づいてもらうことができ、メンタル不調の早期発見につながりやすくなります。また、専門家と話すことで、心の病の可能性をアセスメントしてもらうこともできます。さらに、話をする行為そのものが、ストレス解消になります。
■K:「気分転換をする」
気晴らしや趣味など、何らかの楽しみの対象を持つことです。特に、時間に追われている人やワーキングマザーなどは、気分転換の手段を見失っていることが少なくありませんか? 週に1回程度の短時間でもよいので、自分を癒し、イキイキさせる時間を作ってみましょう。
散歩、おいしいものを食べる、ストレッチをする、手芸などの手ごろなものでよいのです。自分なりの楽しみを見つけてみましょう。
以上のようなN・H・Kのバランスを心がけていくと、心が疲弊しにくく、メンタルヘルス不調に陥りにくくなります。ぜひ日頃のストレスケアにこの3つのポイントがバランスよく導入されているかどうか、振り返ってみてください。
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