冷えが続くと、老化が加速してしまう
「腎気」は28歳でピークを迎え、次第にパワーダウンする
「東洋医学では、腎気(じんき)という生命エネルギーがあり、ホルモンや泌尿器系、生殖器系、免疫系などの働きを司っていると考えられています」と話すのは、女性の健康支援に力を注ぐ、鍼灸師の辻内敬子さんです。
ほかにも腎気は、からだの成長や発育に大きく関わっているのだとか。
「2000年ほど前に書かれた中国最古の医学書『黄帝内経(こうていだいけい)』には、7歳で歯が生え変わり、14歳で初潮を迎えるなど、女性のからだは7年周期で変わると記されています。その変化に大きく関係しているのが腎気だというのです」(辻内さん。以下同)
腎気のパワーは生まれてから徐々に高まり、28歳でピークに達すると、その後はだんだんと衰えていくとのこと。
「同じく『黄帝内経』によると、49歳で腎気のパワーはさらに低下して、閉経を迎えるとも記されています」
しかも腎気は、冷えの影響をとても受けやすいという特徴があるのだそう。
「冷えを放置すると、腎気はパワーダウンして、からだの抵抗力や回復力が落ちます。ただでさえ腎気が落ちる更年期に冷えが重なると、さらにパワーダウンし、実年齢よりも年をとったようなからだの状態になるのです」(下図参照)
加齢による腎気の低下は避けられませんが、冷えは極力遠ざけて、老化のスピードをゆるやかにしたいもの。「腎気は冷えのほか、塩分の摂りすぎや心的ストレスにも弱いため、これらに配慮した生活を心がけましょう」
皮膚のバリア「衛気」で寒さをはね返す
外気の冷たさや、冷たいものの摂りすぎ、運動不足、もともとの虚弱体質、古傷などが、冷えを引き起こす原因です。特に寒さが増すこれからの時季は、からだの中に冷えを取り込まないことが肝心。カギを握るのは、「衛気(えき)」というバリアです。
「東洋医学では、皮膚の表面に衛気のバリアが備わっていて、寒さや暑さ、湿気、乾燥からからだを守ると考えられています」
衛気は、体調により日々厚さが変化するのだそう。
「衛気には腎気が深く関係していて、腎気のパワーが十分だと、衛気も厚くなって冷えをはね返せるのです」
もともと冷え性だったり、体調を崩していたりすると、衛気が薄く、からだに冷えが入り込みやすくなってしまいます。自覚がなくても、手のひらで手足や腹部などに触れてみると、実は冷えていることに気づくかもしれません。
「まずは、自分のからだのどこが冷えているのか確認してください。そして、冷えている部分をしっかり温めること。その際に大切なのが、自分の心地よいという感覚です。私たちのからだは日々変化していますから、温度や温める時間などの一定条件よりも、自分の快・不快の感覚を信頼してほしいのです。そうすれば、冷えで低下した腎気のパワーもだんだんと上がるはずです」
冷えが初期段階であれば、手足などの末端が冷えています。
「女性は男性に比べ筋肉量が少ないので、からだの末端まで熱が届かず、手足や足先ほど冷えやすいからです」
さらに冷えが進むと、足先からふくらはぎや太ももまで冷たくなる《下半身冷え》に。
「運動不足や座ったままの姿勢が続くと骨盤まわりの血流が悪くなり、下半身全体が冷えてしまいます」
おなかに触れるといつも冷たいという人は、内臓まで冷えが入り込んでいる可能性も考えられます。そのまま冷えを放っておくと、《ほてり冷え》に。
「ほてり冷えは、からだの中が冷えているのに、ほてりを感じてしまう状態。特に更年期の人に多い症状です。改善するには、規則正しい生活を心がけるなどして自律神経を整え、まず自分が冷えていることを自覚する必要があります」
冷えを改善する生活習慣やつぼ療法などの具体的な方法は、次ページからお伝えします。
からだを冷やさないための5ヵ条
腎気のパワーを落とさないためには、冷えを遠ざけることが一番。からだの内側と外側から温めましょう
【1】首、手首、足首はしっかり防寒を
皮膚の表面近くに動脈が通っている首、手首、足首が冷えると体温が下がり、一気にからだが冷えます。
「こうした部位が冷たいと感じたら、衛気が薄くなっている証拠。マフラーや手袋、レッグウォーマーで防寒対策をしましょう。特に大事なのは足首です。おすすめしているのが、足首ウォーマー。足が温かくなると、肩こりも改善します」(辻内さん。以下同)
【2】お風呂は、心地よい温度と時間で
腎気を高めるには、からだを温めて血行をよくすることが欠かせません。そのためにも、毎日湯船につかりたいもの。
「体質によって、適切な温度や時間は異なるため、自分が気持ちいいという感覚を大事にしてください。むやみに汗をかくと湯冷めしやすくなり、よけいに冷えが入り込みやすいので注意して」
ただし、汗が出にくい人はのぼせがちなので、長時間の入浴は避けましょう。
【3】湯たんぽやあんかを使って熟睡を
からだが冷えていると熟睡できず、睡眠の質が低下して、体調を崩す原因に。
「足が温かいと、気持ちよく眠りに入れます。体温はひと晩のうちに変化するので、全身を覆う電気毛布よりも、暑く感じたら外すことができる、湯たんぽやあんかがおすすめです」
【4】季節の食材を摂れば、体調が整う
きゅうりやトマトはからだを冷やす作用があり、冬に食べるのはおすすめしません。からだを温める食材を摂りましょう。
「旬のごぼうやれんこん、しょうがなどの根菜類はからだを温める食材の筆頭。季節の食材を食べていると、おのずと体温や体調が整います」
【5】つぼ押し&お灸で血流をスムーズに
からだの血行をよくする4つのつぼ。定期的に刺激することで、血液などの体液の流れがよくなります。
<冷えに効果的な4つのつぼ>
【湧泉(ゆうせん)】
エネルギーが湧き出し、活力を与える。冷えとむくみをとる。
足でグーをつくったときに、足裏にできるくぼみにある。足裏を3等分した上から約3分の1のところ。
胃腸の調子を整え、血液の流れをスムーズに促すつぼ
【三陰交(さんいんこう)】
胃腸の調子を整え、血液の流れをスムーズに促す。
内くるぶしのいちばん高いところに小指を当て、指幅4本分上の人さし指が当たるところ。痛みがない程度に押圧する。強く押しすぎるととあざができやすいので、要注意。
基礎代謝を活性化するつぼ。手足の冷えに。
【合谷(ごうこく)】
基礎代謝を活性化する。手足の冷えに。
親指と人さし指の骨が交わったところから、やや人さし指寄りにあるへこみ。
血行を促し、ストレスや疲れを緩和するつぼ。
【労宮(ろうきゅう)】
血行を促し、ストレスや疲れを緩和する。手足の冷えに。
手を軽く握ったときに、中指の先が当たるところ。
《つぼ押しのコツ》
ぎゅうぎゅうと押すのではなく、ゆっくりと圧をかけ、すーっと抜くように離すことが大事。
自分が心地よい程度に1回で約1分押せば十分。1日の好きな時間帯に押しましょう。
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