硬くなった肩甲骨のチェック方法

体は加齢とともに硬くなる。普段からほぐしておかないと体にさまざまな悪影響を及ぼす部位がある。それは肩関節の土台といえる「肩甲骨」。背中の上部に左右対称に位置している逆三角形の平たい骨だ。

肩甲骨と体幹(胴体)をつなぐのは鎖骨のみで、首から肩、背中にかけて広がる「僧帽筋」など、大小18種類もの筋肉によって支えられている。その分、自由度の高い動きが可能となる。

肩甲骨の動きが悪くなるのは、肩甲骨を動かしている筋肉が衰え、肩甲骨と筋肉をつなぐ腱、そして肩甲骨と鎖骨をつなぐ靱帯が硬くなるからだ。

では、肩甲骨の動きが硬くなると、体にどんな不調が表れるのか。

「肩甲骨リセット」(文響社)の著者で、ハーバード大学医学部とソルボンヌ大学医学部で客員教授を務める根来秀行医師が言う。

「肩甲骨が硬いと上半身の血流が悪くなるので、首や肩のこりの原因になることは何となく想像がつくと思います。しかし、他にも『だるい』『疲れが取れない』『ぐっすり眠れない』『血圧が高くなる』『腰が痛い』『体が冷える』など、体のさまざまな不調につながります。その悪影響を及ぼす最大の理由は、首を突き出し、背中が丸くなり、肩が前に出る『前かがみの姿勢』になるからです」

まずは、自分の肩甲骨がどれくらい硬くなっているか、「肩甲骨ガチガチ度チェック」で確認してもらいたい。

【肘がどの高さまで上がるか】

胸の前で、両手のひらと両肘をくっつける。

手のひらと肘をくっつけたまま真上に上げる。

[判定]肘を鼻の高さまで上げることができたらOK。の段階で両肘をくっつけることができなかったり、鼻の高さまで上げられなかったりしたら、肩甲骨が硬くなっている可能性がある。

【後ろで組んだ腕がどこまで上がるか】

直立し、両手を後ろで組む。

両手を後ろで組んだまま上げる。腕を上げるときに上体を倒さないようにすること。

[判定]腕を60度以上の角度に上げることができたらOK。60度未満の場合は肩甲骨が硬くなっている可能性がある。

加齢に加えて肩甲骨まわりの筋肉が衰え、前かがみの姿勢(ネコ背)になってしまうのは、スマホやパソコンなどを利用する時間が長くなったことが一因になっている。その状態が長く続けば、その姿勢を維持する形のまま硬くなるのだ。肩甲骨のガチガチ度は姿勢でもチェックすることができる。壁に肩とお尻、かかとをつけて立つ。その状態で壁と腰との間の隙間が小さければOK。隙間に手を差し込むと、軽く圧がかかるくらいだ。しかし、壁と腰の間に大きな隙間ができるほど腰が反っていたら肩甲骨が硬くなっている可能性があるという。

浅い呼吸は自律神経を乱す

では、前かがみの姿勢が基本姿勢になってしまうと、どうして体の不調の原因になるのか。

「呼吸するときに働く筋肉の中でも特に重要なのが、肋骨と肋骨の間にある『肋間筋』と、肋骨の下にあるドーム状の筋肉の膜である『横隔膜』です。前かがみの姿勢になると、横隔膜の動きが制限されてしまい呼吸が浅くなるのです。そして横隔膜を使えない浅い呼吸の最大のデメリットは、自律神経をコントロールできなくなることです」

自律神経を自分の意思でコントロールできる唯一の方法が、横隔膜を使った呼吸法(腹式呼吸)。つまり、肩甲骨が硬くなると自力で自律神経を整えることができなくなるため、体の不調を引き起こしやすくなるのだ。

浅い呼吸を調べるチェック法がある。静かに鼻から息を吐いたあと息を止める。そのまま息をしたくなるまでの時間を計る。息を止めていられる時間が30秒以上なら呼吸は浅くなっていない。30秒未満なら呼吸が浅く、肩甲骨も硬い可能性がある。

横隔膜の動きをチェックする方法はこうだ。肋骨の下の骨際に、親指以外の4本の指を食い込ませる。鼻から息を吐き出す。お腹に空気を入れるつもりで、鼻からゆっくり息を吸う。鼻からゆっくり息を吐き出す。息を吸ったときに指が押し上げられ、息を吐いたときに指が食い込むようなら、横隔膜はしっかり動いている。

肩甲骨が硬いことによる血流の悪化、浅い呼吸による自律神経の乱れは、全身に張り巡らされている毛細血管の劣化にもつながるという。