体重は一年の間にいくらか変動するのが普通。お正月休みに食べ過ぎて少し体重が増えたり、おなかをこわして1〜2kg減ったりするような多少の変化は当然起こり得るものですし、何も心配することはありません。
「でも、半年足らずの間に体重が5%以上減って、思い当たる理由もなさそうであれば、医師に診てもらう方がいいでしょう」と言うのは、ペンシルベニア大学の内科学教授で内分泌科医のアン・カッポラさん。つまり、50~60kgの人なら、短期間に3kgほど減ったら赤信号ということ。
「明らかな理由もなしに体重がかなり減るのは、普通ではありません。食事や活動に変化がないのに体重が減るなら、少し心配する必要があります」(カッポラさん)
実際のところ、コロラド大学の老年医学助教で医師のケリー・ヒルドレスさんによると、説明のつかない減量は、重大な病気の初期サインかもしれません。今回は、体重が突然減った原因として考えられる障害・病気を8つご紹介します。
1. 甲状腺の問題
「体重減少は、“甲状腺機能亢進症”(甲状腺の活性過剰)でよく見られる症状です」とカッポラさん。代謝と成長の調節をしている器官の甲状腺(首にあるチョウチョ型の腺)がホルモンを作り過ぎることにより、身体にさまざまな変化が起きるのです。
「甲状腺の問題が疑われる場合は、空腹感が強くなっていないか、あるいは動悸がしないかをチェックします」(カッポラさん)。睡眠障害や、いつも暑く感じることも、甲状腺が活性しすぎることでよく見られる症状だそう。
2. 胃腸の病気
「セリアック病は、グルテンを摂ると小腸がダメージを受ける自己免疫疾患です。この場合に体重が減ることがあります。また、おなかの張りや下痢など、ほかの消化器系の症状も一緒に現れてくる傾向があります」とオハイオ州の名門非営利医療機関、クリーブランド・クリニックの胃腸病専門医、ジャミル・ワキム=フレミングさんは説明します。
どうしてなのでしょう。「セリアック病の人がグルテンを食べると、免疫系が正常に働きにくくなります。この乱れは小腸の内壁にも影響し、その結果、栄養がうまく吸収できなくなるのです」(有名な米国の総合病院、メイヨー・クリニックの情報サイトによる)。
クローン病のような炎症性の腸疾患もやはり吸収に悪影響を及ぼすため、原因不明の減量につながる場合があります。
3. すい炎
「すい臓は消化を助ける酵素を作りますから、問題が起きるとやはり原因のわからない体重減少につながることがあります」とワキム=フレミングさん。
全米すい臓財団(NPF)によると、すい臓が炎症を起こす“すい炎”がずっと続いている人は、普通に食べていても急速に体重が減る傾向があります。身体が食べ物をちゃんと消化できるほど十分に酵素を作れないからです。胃の痛み、色が変な(または油っぽい)便、下痢、脂っこい食べ物を摂った後の吐き気といった症状に注意しましょう。
4. うつ病
うつ病でよく見られる症状が、食欲減退。気分の変化が少しばかり深刻な状況だと気づかなければ、説明のつかない体重減少につながります。
「多くの場合、うつ症状の真っ只中にいる人は、体重が減っていることにも気づきません」とカッポラさん。うつ病でよくあるほかの症状には、イライラ、深酒、優柔不断、睡眠障害などがあります。
5. 糖尿病
「初めて糖尿病になった場合、とくに早期に体重が減ることがあります」と、カッポラさん。同時に、ものすごく喉が渇いて、しょっちゅうおしっこに行っているような気がするかもしれません。
「身体がブドウ糖を吸収できないので、そのまま尿と一緒に排出していて、そのために喉が渇きます」(カッポラさん)。糖尿病になると、筋肉のたんぱく質や脂肪などが分解され、そのせいで急に減量が進む結果に。
6. 関節リウマチ
ヒルドレスさんによると、関節リウマチのような炎症性の病気(免疫系が間違って健康な組織を攻撃してしまう症状)や、一部の感染症にかかると食欲が落ちることがあり、体重減少につながります。
このような病気は腸の炎症を伴うケースも多く、栄養の吸収が妨げられて、病気の診断を受ける前から説明のつかない減量が見られるかもしれません。
7. 十分に食べていない
「専門家が“肥満の逆説(Obesity Paradox)”と呼ぶ現象があります」とヒルドレスさん。簡単に言うと、太っていると病気になりやすいはずなのに、年をとると、太っている方が死亡リスクが下がるという逆説のこと。
「年をとるにつれて、胃がカラになるまで時間がかかるようになり、おなかが空きにくくなります。しかも、食欲と満腹感をコントロールする脳の信号も弱くなります」(ヒルドレスさん)
そのため年配の人は食べる量が減って体重が減少し、身体に必要な栄養を十分に摂れないようなのです。「いろいろな薬も食欲に影響しますから、いつどれくらい食べているか気をつける必要があります」(ヒルドレスさん)
8. がん
「特定のがん、それに胃腸の腫瘍やかい瘍は、炎症や吸収不良を引き起こすため、体重が減る結果に。説明のつかない減量で受診した人の場合、胃腸に腫瘍や炎症がないか調べます。
また、食道(のどと胃をつないでいる管)に腫瘍がないかどうかも見ます。そのせいで飲み込みにくくなっている可能性がありますから」と、ワキム=フレミングさんは解説します。
病気のサイン、見逃さないで
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