首を支える筋肉は毎日、同じ姿勢や悪い姿勢を長く続けたり、ストレスの多い生活を続けていたりすると、縮んで硬くなり「こり」が生じてくる。それが一時的なもので、ゆっくり休んだり運動して解消されれば問題はないが、慢性化したら要注意だ。
何も対策を取らずに放置すると、首の骨や軟骨が変形して神経の圧迫を招き、腕の痛みやしびれを引き起こす。さらに悪化すると、手足のマヒや内臓の機能低下など、症状の重症化を招くこともある。この肩こりから始まる一連の症状が「頚椎症」だ。
「最新版 首を伸ばして自分で治す!頸椎症」(宝島社)の著者で、整形外科「竹谷内医院」(東京都中央区)の竹谷内康修院長が言う。
「首・肩に慢性的なこりを抱えている人は、自分はすでに『頚椎症の入り口』なのだという自覚を持ち、筋肉や骨の状態が悪化しないように注意する必要があります。この時点で、ストレッチなどの運動療法で筋肉の緊張を和らげることが大切です。加えて、首や肩に負担をかける日常的な悪い姿勢を直す習慣も大切です。最も多く見られる悪い姿勢は、首と頭が前に出て背中が丸まった『ネコ背』です」
首は、成人で約5キロある頭を支えている。ところがネコ背になって頭が前方に出たり、スマホやパソコンをのぞき込んで前に30度傾けた姿勢をとると、頚椎(首)にかかる負担は約4倍の18キロに跳ね上がる。これは頚椎にかかる圧迫力が4倍になることを意味する。
基本的なライフスタイルとして、頚椎症を予防・改善するには、できれば椅子を使った洋式の生活を送ること。
畳や床にじかにお尻を着ける和式の生活は、骨盤が後ろに倒れやすく、どうしても背中が丸まり、頭が前に出て、首に負担をかける姿勢になるからだ。
■立ち姿勢の基本
理想的な立ち姿勢は、横から見たときに「耳-肩-腰-股関節-ひざ-外くるぶし」が一直線になること。しかし、これを意識するのは難しい。そこで、立ち姿勢を簡単に改善できるコツがある。
「まず、背中の中心線上で、肩甲骨の一番下くらいの高さに『背中のボタン』があるとイメージしてください。このボタンを背中からグーッと押されているとイメージしてください。すると、自然と肩が後ろに引かれて、体の真上に頭が乗る感じを体感できるはずです」
■首の負担が少ない椅子の座り方
首にやさしい座り姿勢をつくる5つのステップはこうだ。①骨盤を垂直に立てて椅子に座る②肩甲骨の一番下辺りの背骨を意識しながら背筋を伸ばし、胸を張る③両肩を軽く後ろに引く④頭を気持ち後ろに引く。顎を軽く引くだけでもOK⑤ステップ1~4だけでも正しい姿勢になる。しかし、すぐに疲れて悪い姿勢に戻るので、背もたれにしっかりもたれて力を抜く。
■スマホの持ち方
スマホは画面が小さいので、のぞき込む姿勢になってネコ背になりやすく、首・肩に大きな負担がかかりやすい。①立ち姿勢では、なるべく高く持ち上げ、可能な限り目の高さに合わせて正面で見る②高く上げた腕が疲れないように、反対の手でひじを支える。
座っているときは椅子を前に引いて、体を机に近づけ、スマホを持った腕のひじを机につける。
■パソコン作業の座り姿勢─デスクトップ型
まずは、「首の負担が少ない椅子の座り方」が基本姿勢。さらに次の4つを注意する。①椅子と机を近づける②ひじを肩の真下または少しだけ前に出し、そのまま手の位置にキーボードを持ってくる③画面は視線がやや下向きになる高さにする④椅子の高さは、足が地面にしっかり着き、太ももへの圧迫感が少ない高さに調節する。
「ノート型パソコンは、のぞき込む姿勢になるのであまり好ましくありません。対策として、安定した箱などを使って、画面を10~15センチほど高くして、操作は外付けのキーボードを使うのがいいでしょう」
■ストレス管理のコツ
ストレスがかかると交感神経の働きが高まり、筋肉が緊張し、こりや悪い姿勢を誘発する。そこで勧めるのが「30分ルール」。座って仕事をしているときは、30分に1度は立ち上がったり、歩いたりして姿勢のリセットタイムをつくる。昼食後には15分程度、目を閉じてリラックスするだけでも交感神経を鎮めることになるという。
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