マスク生活も長くなってきたが、慣れた人もいれば早く外したいと願う人も。マスクを巡る悲喜こもごもがありそうだ。
鼻から下が一気に老けた……
「先日、久しぶりに友人に会ったんです。最後に会ったのが去年の初めだからほぼ2年ぶり。お互いにマスクを外して食事をしながら、『こういうのも久々よー』と。そうしたら友人が『私、鼻から下が一気に老けたの』と言うから笑っちゃいました。でも帰宅して鏡を見たら、明らかに私も口角のあたりがだらっとしてるんですよね」
タキコさん(40歳)はマスクをしたままそう言って苦笑する。職場でもマスクは必須だし、子どもの学校へ行っても近所のママ友と少しだけ立ち話をするときも、マスクを外したことはない。長時間、外すのは家の中だけだ。
「あごのあたりもたるみが目立つんですよね。鼻から下の緊張感がないからでしょうね。お化粧もほとんどしなくなったし、口紅なんてまったくつけない。めがねをかけるときもあるんですが、めがねだとアイメイクもしない。メイクを忘れてしまいそうです」
これではいけないと思いつつ、結局、2年がたってしまったと感じている人は少なくないだろう。
「このまま春くらいまでマスクは外さないつもりですが、来年の夏あたり、コロナ禍もかなりおさまったら、人はたぶんみんなマスクを外しますよね。そのときはどうしよう……と考えてしまいます。この状態だったら、私はずっとマスク生活でもいいような気がしてきた。細かな表情を見られることもないし」
若い人たちも似たような感想をもっている。
「人の表情がいつも怖いと思っていたので、私はこのマスクの世界が気に入っています。自分の表情も隠せるので、前ほど対人恐怖が強くなくなったし、あまり顔を見ないで話しても失礼にならないような気がして、今のほうが気が楽です」(27歳・男性)
マスクは、さまざまな影響を人間関係にもたらしているのかもしれない。
マスク生活で誰が誰だかわからない状態に
一方、マスクをしていることで人間関係が希薄になった気がするというのは、サエさん(45歳)だ。コロナ禍でソーシャルディスタンスをとっていることもあいまって、「物理的な距離もある上にマスクで表情がわからない。つい当たり障りのないことを言ってその場から去ることが多い」と嘆く。
「仲良しだったママ友たちとは、しょっちゅうお茶を飲んだりカラオケに行ったりしていたんですが、それもできなくなった。LINEグループを作ったものの、文字のやりとりだけじゃ寂しい」
知り合いになった別のママ友数名をLINEグループに招待したが、実際に会ったときには誰が誰だかわからなかったという。
「初対面じゃないんですよ。だけど最初からずっとマスクをつけたまま会っているから、マスクなしだとどういう顔をしていてどういう表情をする人なのかが、いつまでたってもわからない。これでは親しくなりようがないなと思います」
その中に、不織布マスクと布、常に二重マスクをしているママ友もいて、周囲からは「よっぽど神経質な人なのでは」と噂が駆けめぐった。
だが実際に会ってみると、「神経質な人なのではなく、コロナに対して注意深いだけだとわかった。それ以外のことにはけっこう大雑把で明るい人だった」というから、人となりへの誤解も生まれそうだ。
「久しぶりに友人4人で食事をしたとき、写真を撮ろうということになったんですが、その店が感染対策バッチリで4人の間に完璧なアクリル板があった。それを押しのけてまで写真を撮るのも変なので、外で撮ろうと。
ところが外に出た瞬間、みんなマスクをつけて(笑)。結局、マスクありの写真撮影になりました。今はこれが通常ということなんでしょうね」
いつかマスクを外して親しい人と近い距離で話せるようになればいいなとサエさんは言う。だが、マスクをしたまま適正な距離を保って人と接したいという人もいるだろう。
逆にマスク生活になったからこそ、自分が好む人との距離感がわかったと話してくれた人もいる。マスク1枚で、いろいろなことを考えさせられてきたこの2年間だと、多くの人が改めて考えているようだ。
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