「シニアでも、2カ月半のトレーニングで、約30%筋力をアップさせることは可能」そう話すのは、西九州大学リハビリテーション学部准教授で理学療法士の中村雅俊さん。
そのトレーニング方法とは、3秒間かけて「椅子に座る」「かかとを下ろす」といった、筋トレのイメージとはかけはなれたごく負荷の軽いものだった。
中村さんの提唱する「3秒筋トレ」の方法と、効果を発揮する理由を教えてもらった。
2カ月半で約30%筋力アップも
次の3つの項目のうち、思いあたることがあるだろうか。
・片脚で30秒以上立てない
・椅子から、片脚で立ち上がれない
・和式トイレでしゃがむのがしんどい。しゃがんだらなかなか立てない
ひとつでも当てはまれば、あなたの筋力は衰えている可能性がある。
「筋力低下はサイレントキラー(静かなる殺し屋)です」と中村さんは警鐘を鳴らす。
中村さんによれば、30代以降では、運動をしない限り筋肉の機能は年1~2%の割合で低下していく。そのまま行けば、80代には約30~40%も低下してしまうという。
筋肉の機能が低下すると、将来要介護になるリスクが高くなるだけでなく、高血圧、糖尿病、メタボといった生活習慣病や、認知症のリスクまで上がってくる。「若者よりもむしろ筋力が衰えたシニアこそ、トレーニングを2カ月半しっかりやれば最大30%程度筋力アップできる可能性がある」と強調する。
筋肉は足腰から弱る
「鍛えるなら、まずは足腰の筋肉から」と中村さんは言う。その理由を次のように説明する。
「人間は足腰の筋肉から弱っていきます。足腰の筋肉が弱ると、まず、外出が億劫になり、行動範囲も狭まります。
そして外に出ないとさらに筋肉が弱くなり、さらに動きたくなくなる…という悪循環に陥ります。また家の中だけで生活していると、脳への刺激がなくなり、精神的に落ち込んだり認知機能が落ちたりするようになるという悪影響もあります」
足腰から鍛えることはトレーニングの効率としても理に適っている。
「足腰の筋肉は、体全体の筋肉の3分の2を占める大きな筋肉。だからこそ、一度落ちてしまうと元に戻すのが大変。そこで、普段から鍛えておくことが大切です」
2種目で体の3分の2の筋肉を鍛える
では、どのようなトレーニングをすればいいのだろうか。
「シニアでも30%も筋力がアップするなんて、どんなにハードなんだろう…」と思った人は、拍子抜けするかもしれない。
基本の2種は、「椅子座り」と「かかと下ろし」。
「椅子座り」は、どの家庭にでもある椅子に、3秒間かけてゆっくりていねいに腰を下ろす。
「かかと下ろし」は、椅子の背もたれに手を添えて、3秒間かけてゆっくりていねいにかかとを下ろす。
たったこれだけ。この2種目を1日10回、1~2日おきに週3回以上行い、2カ月半(10週間)続けることを目標にしたい。
「椅子座り」では太ももの前の大腿四頭筋と太ももの後ろのハムストリングス、お尻の大殿筋が鍛えられる。「かかと下ろし」では、ふくらはぎの下腿三頭筋が鍛えられる。
コメントをお書きください