全身の筋肉は、加齢とともに弱ってきます。特定の場所の筋肉だけが弱ることはあまりないですが、通常は、使っていないところから順に弱くなっていきます。
「体力が落ちたなぁ」と感じるのは、その断片的な症状。気づいたら修正することが大切です。
そこで本稿では、体力が落ちたと感じる、"あるあるの場面"をピックアップして、それを克服するための「ドクターズ筋トレ」をご紹介します。
実際に患者さんを診察するときにもそうしていますが、どの筋肉が弱っているからこうなるのか、それらを防ぐためにはどんな筋トレが必要なのかをお伝えします。
フィットネストレーナーとしての知識があるおかげで、単に「関節を守るために、体重を落としたほうがいいですね」と言うだけでなく、「こうすると体重管理ができますよ」とか、「この部分の筋肉を強化するために、この運動をやってください」と具体的に示すことができるのは私の強みだと自負しています。
以下にご紹介する筋トレは、私が日常、患者さんと接してよく聞くお悩みと、その解決法として、だれもができそうな種目を選びました。どれも1回30秒しかやりません。
"段差でつまずく"なら「つま先上げ」でスネを鍛える
・街を歩いていて、ちょっとした段差でつまずく
・階段の段差を見誤って、つま先が引っかかって転びそうになる
危うく転倒しそうになると「誰かに見られていたかな?」なんて恥ずかしくなって、思わず周りをキョロキョロ見渡してしまいますよね。
つまずきや転倒は加齢とともに増えてきますが、若い方であっても疲れていると起こりやすくなります。そして、運が悪いと骨折などの大けがにつながりかねない重大な事象です。
原因は大きく2つあり、1つは大腰筋が衰えることで足が高く持ち上げられず、すり足になることです。そして、もう1つは、前脛骨筋と呼ばれるスネの骨(脛骨)の外側に位置する筋肉の衰えです。
前脛骨筋は、つま先を持ち上げたり、足首の動きを安定させたりする働きを持ちます。
ここの筋力が低下すると、足首が安定せずに歩きにくさを感じ、歩く姿勢も悪くなります。足も疲れやすくなるので、長い時間続けて歩くことが難しく、ねんざや転倒のリスクが高まります。
「つま先上げ」は、数少ない前脛骨筋を鍛えられる筋トレの1つ。立って行っても、イスに座って行ってもかまいません。背すじを伸ばして両足をそろえ、かかとを床につけて、つま先を上げます。
なるべく高く上げて1秒止めることが効果を高めるポイントです。
“ふんばりがきかない”なら「前のめりでガマン」
・濡れた路面で「ツルッ!」と滑って、踏みとどまれず転んだ
・段差でつまずき「おっとっと!」と前のめりになって、そのまま転倒した
このような場面で、バランスを失っても転ばないのは、高齢になるほど至難の業です。
筋力が十分な若いうちは、滑ったり、バランスをくずしたりしたとしても、そこからふんばって体勢を整えることができるのですが、筋力が低下した高齢者は、それができずに転倒することが増えます。
ふんばるときに大切なのは、中臀筋や大腿四頭筋で、もも上げや足裏キックで鍛えられます。もう1つ欠かせないのは、足趾屈筋群(そくしくっきんぐん)という、足の指の筋肉の強化ランジは、下肢を鍛える代表的な筋トレのメニューです。
両足は肩幅程度に開き、背すじを伸ばして立ちます。上体をまっすぐにしたまま、片方の足を斜めに1歩前に出して股関節とひざを曲げていきます。ひざが90度になるくらいまで曲げたらゆっくりと元の姿勢に戻ります。
上半身をまっすぐにしたまま、しっかりと腰を落とすことで筋トレ効果が高まります。バランスがとりづらい場合は、壁などで体を支えて行っても問題ありません。
上体を前に倒すやり方もありますが、背中が丸まる原因になるので、あえて「上半身をまっすぐにしたまま」としました。
足を1歩前に出す幅で運動の強度が変わり、幅が大きいほど強度が強くなります。
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