朝活のすすめ

1日のうちに「自分時間」はありますか? 朝活コミュニティ「朝渋」代表の井上皓史氏は、「早起きこそが自分のペースで過ごせる時間を確保できる方法だ」といいます。本稿は同氏の新著『がんばらない早起き 「余裕のない1日」を「充実した1日」に変える朝時間の使い方』より、早起きが生み出す具体的なメリットと、そのための夜時間の使い方をご紹介します。

早起きは、自分でコントロールできる時間を生み出す

「早起きのメリットってなんですか?」

よくこんな質問をうけます。この質問に答えるなら、「静寂から1日をスタートできること」だと思います。「静寂」とは、周りが動いていない状態です。

想像してみてください。朝起きた瞬間、いきなり渋谷のスクランブル交差点に立たされていたら? 情報量が多すぎてカオスな状態ですよね。

朝、時間ギリギリまで寝ていて慌てて家を出るというのは、この感覚に近いのではないでしょうか。起きた瞬間に、いろいろな情報の渦に放り込まれ、自分ではコントロールできない状態です。

ここから1日がはじまると考えると、これは結構、疲れますよね。そうではなく、早起きをして、周りが動き出す前の「静寂」の時間をつくります。
朝は、自分でコントロールできる時間です。周りに流されずに、自分で意思決定ができる時。逆に言えば、朝以外に自分でコントロールできる時間をつくるチャンスはほぼありません。家族やパートナーが起きてきて、仕事や家事がはじまると、自分が時間をコントロールできる状態ではなくなります。SNSやLINEなどのツールは24時間つながっているので、それが動きはじめると、いつどこにいても画面に表示されるメッセージに意識や時間を奪われていきます。

実際、1日のほとんどは「他人時間」になりがち。忙しい毎日の中で「他者とのかかわりのない時間」をつくるのが難しいということは、みなさんお気づきだと思います。

ですから、「他人時間」に巻き込まれる前に、自分がコントロールできる時間を意図的につくって1日をスタートするというのは、その日のあり方を決める重要なことだと思っています。この他人の意思の及ばない、自分でコントロールできる時間こそが「自分時間」です。

1日のはじまりに、他人に干渉されることなく、自分がやりたいことを自分のペースでできる時間がある。早起きによって生まれた朝の「自分時間」によって、「ごきげん」な状態からその日をスタートさせることができます。だから私は、早寝早起きを実践しているのです。

ノイズの多い夜はNG

私は早寝早起きによって、朝に「自分時間」をつくることをすすめていますが、「夜ではだめですか?」という質問をよくいただきます。

答えはノーです。夜は、朝よりも確実に疲れています。そんなときに「自分時間」をとっても、判断力がにぶく、非生産的だからです。

たとえば1日の終わりに時間をとってじっくり考えごとをしようと思っても、夜の決断は深夜に書いたラブレターのようなもの。翌日冷静になってみるとだいたいまともではなく、恥ずかしくなってやり直すのがオチです。

実際、夜に決めたことでうまくいくケースは稀なのです。また、夜は外部からのノイズが多いので、「自分時間」に集中するのが難しくなります。SNSやYouTubeなどの投稿が活発な時間帯なので、気になる情報や魅力的なコンテンツに誘惑されやすく、集中できません。飲み会などのお誘いがあれば、「今日は飲みに行っちゃおう」となりやすくもなります.そして夜は、時間の制約がないことも問題です。いくらでも夜更かしできてしまい、「自分時間」とは名ばかりに、だらだらと無駄な時間を過ごしてしまうことになりかねません。ですから、疲れていて、判断がにぶく、誘惑が多い夜には期待しないことです。

ちょっと極端ですが、私のスタンスは「夜は捨てる」。夜の時間は睡眠に充てて、翌日の朝の「自分時間」を確保するための準備と考えましょう。早寝早起きで十分な睡眠がとれていて、ノイズが少なく、頭が冴えている朝に「自分時間」をつくることをおすすめします。

時間に制約があるからこそパフォーマンスは発揮できる

朝は出勤時間などの制約があることが気になるかもしれませんが、じつは制約があればあるほど人は集中でき、生産性が上がります。

たとえば、「会議までの1時間」で集中して作成した資料と、残業時間に2、3時間かけてだらだら作った資料では、それほどクオリティの差はないでしょう。むしろ、集中して作成した資料のほうが完成度は高いかもしれません。

「子どもが帰ってくるまでの1時間」でこなせるはずの家事が、「子どもが寝たあとにやろう」と思うとなかなか重い腰が上げられず、いつもより寝る時間が遅くなってしまった……という経験がある人もいるのではないでしょうか。

つまり、忙しい日々を過ごしている人こそ、あえて「制約のある朝を選ぶ」ほうが理にかなっているのです。

夜時間は、翌朝、すっきり起きるための準備時間です。ですから、夜に重要な仕事をしたり、資格試験の勉強を根詰めてやるというのは間違いです。そもそも、夜の疲れた状態でやっても生産性はあがりません。

夜の自分に期待しないことです。大事なタスクほど、次の日の朝にまわしましょう。では、翌朝のための準備として何ができるでしょうか?

まずは、「自分面談」の時間に充てること。毎晩寝る前は、その日の振り返りと明日の作戦会議をします。

どんなに才能のあるスポーツ選手でも、試合だけをしていれば、その人の選手生命は短いでしょう。試合前の準備運動や試合後の体のメンテナンスがあってこそ、長く活躍するためのベースがつくられます。

夜、寝る前に「自分面談」をしておくことは、毎日を「ごきげん」に過ごすために必要な心のストレッチと準備運動です。家族やパートナーがいても、1日の終わりは自分と対話して終わることが望ましいです。

明日を「ごきげん」からはじめるために

ほかに、身の回りのことをちょっと整えておくという使い方もありです。テーブルの上くらいはきれいにして、食器は洗って乾かしておくなど、可能な範囲で生活空間をリセットした状態で1日を終えておくと、翌朝の「ごきげん度」が上がります。

明日着る服を用意しておくなどもいいですね。そのほか、心地よく眠るための、好みのTips(裏技、コツ)を取り入れることもおすすめです。

・ストレッチをする

・部屋の明かりを少し落としておく

・お香を焚いてリラックスする

・ハーブティーを飲む

・着心地のよいパジャマを着る

あれもこれもやろうとすると大変になるので、ここでも「自分の気分が上がること」が大事。負担にならない程度に、寝る準備と次の日の朝のためになることをやってみてください。