歩くと血圧が下がるメカニズム
脳や腎機能の働きを改善する
ウォーキングをすると、なぜ血圧が下がるのでしょうか。
第1に、現代では大きな問題になっている肥満の改善があります。じつは、肥満は高血圧の大きな危険因子です。
血圧は単純に説明すると、心臓から全身に送り出される血液の量(=心拍出量)と、体のすみずみに行き渡る血液の流れにくさ(=末梢血管抵抗)で決まります。
肥満の人は、標準体重の人とくらべて、全身に栄養を運ぶ血液の量も増えます。そのため、血圧が上がるのです。
高血圧の領域で世界的に有名な医学雑誌「ハイパーテンション」(2003年11月)に発表された、メタアナリシス(複数の研究の結果を統合して分析する統計手法)を用いて研究が行われた報告があります。
それによると、体重がおおむね1キログラム減ると、収縮期血圧が1mmHg減る計算になります。ですから、ウォーキングをして体重が減れば、血圧は下がります。
毛細血管に酸素や栄養を行き渡らせる
第2に、ウォーキングなどの有酸素運動をすると、全身の血管が広がり、血圧が下がるのです。
筋肉の振動とともに血管に刺激が伝わり、血管の壁をつくる血管内皮細胞で、血管拡張物質である一酸化窒素(NO)がつくられます。
とくに、有酸素運動をすると、“第2の心臓”といわれるふくらはぎのポンプ作用により、血流がアップします。
そのため、大血管だけでなく、全身の血管の99パーセントを占める毛細血管にも酸素や栄養が運ばれるのです。
歩数の多い人は腎機能が改善する
そのメカニズムですが、大血管の場合には、血流の増加によって血管のいちばん内側にある、血液と接する部分の内膜を構成する血管内皮細胞で一酸化窒素(NO)が多くつくられます。
それが、血管の2番目の層である中膜にある血管平滑筋(へいかつきん)の緊張をゆるめることで、血管全体を弾力があってなめらかな状態にすると考えられています。
全身の血管の緊張がとれると、血圧が低下しますから、動脈硬化も改善されます。なかでも、脳と腎臓という二つの重要な臓器には、全身の血液のそれぞれ20パーセントが流れていることから、脳と腎臓にもいい影響をもたらすと考えられます。
脳では、血流の改善によって、脳梗塞の予防になったり、アミロイドβ(ベータ)のような認知症の原因と考えられている老廃物の排泄がうまくいったりすることが考えられます。
腎臓は、よく知られているように、体内の老廃物をこし取って尿として排泄する臓器です。
その中心部にあって、老廃物をこし取る作用(濾過<ろか>)を行う糸球体(しきゅうたい)という毛細血管の塊に、無用な圧力をかけないようにすることで腎臓の負担を減らすと考えられます。
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