一生動く体でいるためには、股関節、膝、足首などを柔軟に保つことが大事だが、それには筋トレも有酸素運動も不要。日常生活の中で、十分改善できるのだ。
ニューヨークタイムズでベストセラーになった『すごい可動域』(かんき出版)の著者、ケリー・スターレットはこう言っている。
「本書は、日々続けるには難しすぎるものを羅列するのではなく、ちょっとしたことを意識的に行えるように書いている。それは、椅子から立ち上がる回数を増やすこと、バランス能力を改善するために数分間片足で立つこと、ブロッコリーを皿に追加すること、睡眠を助けるアイマスクを着用すること、テレビを観るときは床に座ること、腰や肩、背骨をよく動かすことなどである。
以上は、しばらくサボったとしても、また始めればいい。こういった習慣を日々の基本にすることが生涯健康でいるための拠り所になる」
本書の中から、一部を抜粋、編集して、4回に分けてお届けする。
第3回は、きちんとしゃがめているかのテスト法をお伝えした。今回はその改善法を紹介する。
しゃがむトイレは、股関節に効果大
2002 年に発表された中国と米国の大学による共同研究に、中国に住む高齢者と米国に住む高齢者の股関節炎の有病率を比較したものがある。それによれば、関節炎による股関節痛の発生率が、アメリカ人の男女と比べて、中国人の男女は 80 ~ 90 パーセントも低かった。この違いを生む原因の一部が遺伝にある可能性を指摘しつつも、中国人の日常的な体の使い方に起因していると研究者らは結論付けていた。
そして、「深くしゃがむと股関節がエンドレンジまで達し、直立姿勢では負荷がかからない股関節軟骨に負荷がかかる。使われない股関節軟骨は脆くなりやすいし、ストレスに弱い。しゃがむことが、軟骨のターンオーバーと再生を刺激している可能性がある」と報告している。
しゃがむときは、股関節のほかに、足首と膝の 2 つの関節もかかわってくる。足首は過小評価されがちな部位だが、実は進化の賜物であり、体全体のバランスを維持するうえでとても重要なものだ。
もう1つ大きくかかわってくるのが膝関節だ。膝を 90 度以下の角度に曲げるしゃがみ方は、その膝を悪くすると言う人がいる。しかし、躊躇する必要はない。関節は深く曲がるように設計されており、膝関節も同じだ。スクワットは膝を傷めるどころか、膝を支える筋肉を鍛え、膝を保護するのに役立つ。
実際、最も人間的な行為の 1 つ――うんち――は、膝を深く曲げてしゃがむ能力に依存している。ちょっと前までは、世界のどこにおいてもそのスタイルで排泄を行っていた。ある歴然とした事実がある。しゃがんでトイレする文化圏では、過敏性腸症候群や炎症性腸疾患などの消化器疾患の発生率が明らかに低いことだ。
都会に住む私たちが使っているトイレは、椅子、コピュータ、クルマを使うときと同様、体のデザインと一致しない不自然な姿勢を強いるものになっている。もちろん、それを放棄するよう求めているのではない。しかし、排泄時の姿勢について考えると、しゃがむのが自然であり、その一点を取ってもしゃがみ込むことが定期的にとるべき姿勢であることがわかる
アジアを旅したり、キャンプに行ったりしない限り、しゃがんでトイレするチャンスはないかもしれない。しかし、床に落ちた何かを拾わなければならないときはあるだろう。ここで、スクワットができるととても便利だ。もちろん、脚をまっすぐにしたまま、股関節を 90 度に曲げて拾うこともできる。しかし、もっと手を伸ばさなければ拾えないときは?
2 つ選択肢がある。1つは立ったまま膝を少し曲げて拾うことだ。その場合は、脚の大きな筋肉ではなく、背中にある小さな筋肉を使って拾い上げることになる(腰痛行きだ)。
別の選択肢がディープスクワットすることだ。これなら、体を低くできるし、脚とお尻にある大きな筋肉を使って、対象物を拾い上げることができる。こっちのほうが安全で効率的なオプションになる。その都度、股関節、膝関節、足首関節の可動域を広げる練習になる利点もある。
日常に取り入れたいスクワットバリエーション
体が覚えているので、驚くほど回復させやすい動作、それがスクワットだ。以下は、スクワット技術を向上させることを目的に行うものではない。前述の通り、私たちは部分的なスクワットをいつもやっている。
練習するのは、いつもの座る動作を、いくつかの関節――股関節、膝関節、足首関節――においてエンドレンジに到達させることだ。
◆シット・スタンド
ディープスクワットに向けて、体を少しずつ再訓練していくモビライゼーション。最初は椅子を支えにし、その後、支えを使わずにスクワットできるところまで進んでいく。
椅子に足の甲を近づけて立つ。肩の高さで両腕をまっすぐ前に伸ばし、膝をゆっくりと曲げ、お尻を椅子の座面に向けて下げていく。座面に少し触ってからゆっくりと立ち上がる。2 ~ 3 秒かけて下げるようにし、ドスンと座らないように注意する
初日はこれを 1 回行う。2 日目は 2 回行う。3 日目は 3 回行う。20 回になるまで、毎日 1 回ずつ増やし続ける。20 回に達したら、今度はさらに下方までスクワットする。
椅子の代わりにもっと低いもの、例えば、コーヒーテーブルを対象に同じ手順を繰り返す。20 回できるようになったら対象物をさらに低いものに変えて同じ手順を繰り返す。最後は、対象物なしで行う。それがディープスクワットだ。ここでも 20 回になるまで、毎日 1 回ずつ増やし続ける。
◆ディープスクワット・ハングアウト
今やっている姿勢は大切だと脳に伝えたかったら、その姿勢(この場合は、しゃがみ込んだ状態)をキープすることが最良の方法になる。ディープスクワットをマスターしたら、能力を失わないよう、深くしゃがんでいる時間を 1 日 3 分間でもいいのでつくるようにする。会社の休憩時間にしゃがんだり、床に座っている時間に取り入れたりする。
※身体の状態は個々異なります。痛みなどの症状がある場合は、その原因を専門医で確かめることも重要です。からだに負担がない動作ですが、疾患がある方、心配な方は専門医の指導のもと行ってください。
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