東洋医学と西洋医学の違いとは

西洋医学と東洋医学。どちらも「医学」と名がついているものの、双方の病気に対するアプローチはまったく異なる。身近な病の「風邪」をひとつとっても、東洋医学では5つの種類が存在するという。生命科学者で元・大阪大学大学院教授の仲野徹氏と、東洋医学の専門家で鍼灸(しんきゅう)師の若林理砂氏の2人が、「風邪」について語り合う。※本稿は、仲野徹、若林理砂『医学問答 西洋と東洋から考えるからだと病気と健康のこと』(左右社)の一部を抜粋・編集したものです。

西洋医学と東洋医学で異なる

気圧・気候による体調への影響

仲野 気候とか気圧に左右されて体調悪くなる人がけっこうおられて気象病とも呼ばれますが、これは東洋医学には昔からあった考え方ですか?これと風邪は近いのでしょうか?

若林 そうですね、風邪(ふうじゃ)の概念に繋がります。

 これは自説なんですけど、風が吹くときは気圧が変わるときでしょう?気圧の変化によって自律神経系が攪乱(かくらん)されて不調になり、さらに条件が重なると病気になるという原理だったのかなと思います。

仲野 気象病は、ないとは言いませんが、西洋医学ではあまり重んじられてこなかったという印象です。

同書より© ダイヤモンド・オンライン

仲野 風寒邪っていうのは、我々がこう冬にひくいわゆる…

若林 一般的に想像する風邪です。

仲野 風熱邪とは?

若林 これは夏にひくような風邪です。

仲野 夏風邪ね。このふたつは違う病気として捉えられてるんですか?

若林 一応、風邪として一括りにしますけど、別々の治し方をします。まず、使う薬が違います。科学的に言えば、炎症がどこにどういうふうに出ているかがたぶん違うので、症状の緩和の仕方が違うんだろうと思います。

仲野 どんな薬が使われるんでしょう?

若林 風寒邪の場合は、からだを温める薬を使うのが基本です。葛根湯(カッコントウ)や麻黄湯(マオウトウ)という薬が一番使われます。どちらも麻黄という成分が入ってます。

効果が得られる漢方薬は

風邪の種類ごとに異なる

若林 麻黄のインフルエンザに対する薬理作用は解明されていまして、ウイルスがタンパク質をつくるのを抑制して、サイトカインの抑制をかけるらしいです。

仲野 ほんまですか?ちょっと説明しときますと、ウイルスなどがからだのなかに入り込んで組織で増殖すると、免疫細胞がその組織に集まってサイトカインなどの炎症性物質を出す。そうすると喉が痛くなったり、熱が出たりする。麻黄にはそういう作用を抑える働きがあると?

若林 漢方メーカーのホームページに書いてあるんですよ。

仲野 そうか。それなら一応信用しときます!

若林 風熱邪の場合は、銀翹散(ギンギョウサン)という薬を使ったりします。このなかには、ハッカなどの冷やす成分が入っています。

仲野 風熱邪に対して、風寒邪に効く薬を飲んだらどうなります?

若林 効かんのですよ。効かんどころか、逆に悪化したりします。

仲野 ほんまですか!それは禁忌みたいな感じになるわけですか?夏風邪に麻黄湯や葛根湯を飲んだりすると…

若林 いきなり熱がバーンと上がったりするんですよ!鍼灸学校1年生くらいのときに喉が痛くなって、葛根湯飲んだら熱が40度超えちゃって、えらいことになりました。

 麻黄湯や葛根湯は、寒気がある熱、首周りや肩周りに凝りがあるような風邪のときに飲まないと効かないのです。

仲野 ホンマかウソかを確かめたいんで、今度夏風邪をひいたら葛根湯飲んでみよ。

若林 やめてください(笑)。

西洋医学における風邪の場合は

季節に関係なく生体反応が生じる

仲野 それにしても不思議です。西洋医学的な風邪の考え方でいくと、季節によって流行るウイルスの種類は違うかもしれませんけど、免疫細胞がサイトカインという炎症性物質を出す、という一般的な生体反応は生じるはずです。夏であろうが冬であろうが、それはほぼ同じだと考える。それなのに、ある薬がある季節の風邪には効いて、ある季節の風邪は悪化させるなんて、あるはずがないやろうと思う。

若林 でも、漢方薬が合ってないとひどいことになるんですよねえ。

仲野 それまた漢方薬の不思議のひとつ。

若林 東洋医学的には、風邪というのは、からだのなかに何か悪いものが入っているわけだから、それを追い出すという考え方なんですね。だから、熱をもった風邪と寒をもった風邪だと、からだの反応が違ってくると考える。

『医学問答 西洋と東洋から考えるからだと病気と健康のこと』 (左右社)仲野徹 著、若林理砂 著© ダイヤモンド・オンライン

仲野 ビタミンCも風邪に効くと言われることが多いけど、結論的には効かないとされている。効くという論文も、効かないという論文もありますけど、最近よく行なわれる「メタアナリシス」、つまり複数の論文を総合して検討することをやると、ほぼ効かないという結論になるらしい。

仲野 ビタミンCが非常に有名になったのは、ライナス・ポーリングという人が言い出してからです。

若林 濃度ビタミンCを研究していた人ですよね。

仲野 そうそう。ポーリングは、キュリー夫人とならんでノーベル賞を2回受賞している数少ないうちのひとりです。1回目はノーベル化学賞をタンパク質の構造の研究でとっている。2回目は、平和賞。

若林 …ええ!?平和賞?

仲野 ビタミンCで、というわけではなくて、核廃絶運動で平和賞です。そんなに偉い人が唱えてたから、ビタミンCは風邪に効くというのが有名になりました。

ビタミンC摂取で肌は白くなるが

大量摂取は別の疾患を招くことも

仲野 ほかにも、がんに効くとかね。一時は、おそらくがんにビタミンCは効かないのではないかと考えられていました。けど、数年前に、効くかもしれないという論文が超一流誌に出ましたから、いまはペンディング状態でしょうか。ポーリングは、晩年はビタミンCのことですこし評判を落としたとも言われてます。風邪に効くというんだけど、一日の必要量が100ミリグラムのところ、3グラムとかけっこうな量を摂取しないとあかんと唱えたんです。

 でね、ほんまに長期にわたって超大量摂取してた人がいてたんです。大阪大学の名誉教授で、日本で買うと高いから、外国に留学してる人に頼んで取り寄せてわざわざ飲んではったんですけど。…これがね、効くんですよ。顔がね、真っ白になってはった。たぶん皮膚の色素であるメラニンの産生抑制によるものだと思いますけど。

若林 やだー!(笑)たしかに美白効果があると言いますけど。私もタケダのビタミン錠を大量に飲んだことがあるのですが、一発で胃がやられた!

仲野 飲んだんですか…ビタミンCを摂りすぎると尿路結石ができやすくなると教科書には書いてありますから、注意が必要です。肌の白さも、自然じゃなくて病的な白さでしたし。

 話がそれましたけど、風邪にビタミンCは効かないっていうのが正しそうです。