超漏れで栄養が無駄になる

厚生労働省が公表している「日本人の食事摂取基準(2020年版)」によると、18歳以上に推奨されている1日のたんぱく質の摂取量は、男性65g、女性50gだそう。しかし、内視鏡専門医の平島徹朗先生と秋山祖久先生いわく「実は日本人の8割がたんぱく質不足。その諸悪の根源は、不要なものが腸から漏れ出して吸収されてしまう<腸漏れ>」だそうで――。そこで今回は、お二人の著書『たんぱく質と腸の新常識: 絶対に漏らしてはいけない 新しい腸活とたんぱく質の正しい摂り方』から一部引用、再編集してお届けします。

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【画像】「腸漏れの危険度」を手軽にセルフ診断。7個以上チェックがつくと、腸漏れ赤信号!

“腸漏れ”で栄養が無駄になる!

ご存じのとおり、腸は栄養を吸収する場所です。しかし、皆さんの腸はちゃんと吸収できているでしょうか?

実は、不要なものが腸から漏れ出して吸収され、そのぶん摂ったはずの栄養素が正しく吸収されていないケースが珍しくありません。それが、リーキーガット症候群、通称「腸漏れ」です。

正常な場合、小腸では粘膜層から消化酵素が分泌され、胃や十二指腸で消化された栄養をさらに分解し、吸収していきます。

しかし、腸粘膜の細胞に炎症が起こると、腸粘膜の細胞と細胞の間にすき間ができてしまいます。

腸は栄養吸収の要であり、免疫の要でもあります。必要な栄養を吸収しつつ、取り込みたくないウイルスや菌、アレルギーの原因物質、有害物質、未消化の栄養素などはブロックし排泄するという働きをこなしています。

ところが、腸粘膜にすき間ができて腸漏れを起こすと、本来ブロックするはずの不要なものを取り込んでしまい、その影響で肝心の栄養素の吸収がおろそかになってしまうのです。これが、腸漏れで栄養不足になる理由です。

<『たんぱく質と腸の新常識: 絶対に漏らしてはいけない 新しい腸活とたんぱく質の正しい摂り方』より>© 婦人公論.jp

つまり、腸漏れが起こると、口から栄養を十分に摂っていたとしても体内ではそれを吸収できておらず、栄養不足を招くのです。

腸漏れが悪化する悪循環

たんぱく質をはじめとする栄養素がうまく吸収されないと、栄養が不足し、細胞の生まれ変わり(ターンオーバー)の周期が乱れてしまいます。

腸粘膜の細胞の新陳代謝もスムーズにできず、腸漏れが悪化。腸粘膜で起こった細胞の炎症は体のあちこちに広がってしまいます。

『たんぱく質と腸の新常識: 絶対に漏らしてはいけない 新しい腸活とたんぱく質の正しい摂り方』(著:平島徹朗、秋山祖久/Gakken)© 婦人公論.jp

すると、さまざまな不調や病気が起こりやすくなり、さらに腸漏れが悪化……という悪循環に陥ります。

まさか、自分の体の中でそんなことが起こっているとは、思いもよりませんよね。

しかし、疲れが溜まる、やる気が出ない、集中力が続かない、肌が荒れる、お腹の調子が悪い、頭痛がするなど、たとえ些細なことでも、なんとなく不調を感じることが増えているなら、それは腸漏れのせいかもしれません

<『たんぱく質と腸の新常識: 絶対に漏らしてはいけない 新しい腸活とたんぱく質の正しい摂り方』より>© 婦人公論.jp

せっかくこまめにたんぱく質を摂取しても、腸漏れをしていたらその努力が無駄になってしまいます。

そんな悲しいことにならないためにも、まずは原因を知り、腸内環境を整えて腸漏れを防ぐことを第一に考えていきましょう。

腸漏れが起こる原因

では、腸漏れはどうして起こるのか? 考えられる原因を知っておきましょう。

腸漏れの原因はこんなにたくさん!

・腸漏れが起こる2大原因

(1)たんぱく質不足

細胞の材料が不足し、腸粘膜の細胞のターンオーバーがスムーズに行えなくなる

(2)腸内環境の悪化

腸内の悪玉菌が増加し、腸粘膜を傷つける

腸内環境を悪化させる原因

・ストレス

・睡眠不足、睡眠の質の低下

・小麦粉食品(グルテン)の摂りすぎ

・乳製品(カゼイン)の摂りすぎ

・ビタミンD不足

・糖質の摂りすぎ、高血糖の常態化

・お酒の飲みすぎ

・加工食品に含まれる合成添加物の摂りすぎ

・白砂糖の摂りすぎ

・人工甘味料のとりすぎ

日本人の7割以上が“腸漏れ”の可能性あり!

前のページで紹介したように、腸漏れの主な原因は身近なことばかりです。

ストレスを抱えている。お酒をたくさん飲む。ときどき甘いものを爆食いする。毎日パンやパスタやうどんなどの小麦粉食品を食べる。チーズやヨーグルトは欠かせない。忙しくて合成添加物たっぷりの加工食品を毎日のように食べる。睡眠不足……。

どれかひとつでも習慣化しているなら、ほぼ間違いなく腸漏れしているでしょう。

つまり、腸漏れは誰にでも起こる可能性があるのです。

そして、一度腸漏れが起こり始めると、前のページで紹介したような悪循環の無限ループが待ち受けています。たんぱく質不足は腸漏れの原因になり、腸漏れはたんぱく質不足の原因になるわけです。

これはあくまで推測ですが、「日本人の8割以上はたんぱく質不足」ということと考え合わせると、「腸漏れの疑いあり」という人も、同程度いるのではないでしょうか。

実際に、健康産業専門紙の『ヘルスライフビジネス』(2023年5月1日発行)では、日本人の約7割は腸漏れを起こしている可能性があることが指摘され、コロナ禍のストレスにより自律神経が乱れた人が増えていることから、腸漏れを起こしている人がさらに増加している可能性にも触れられています。

腸漏れの危険度チェック

ただし現在、腸漏れを調べる検査はなく、内視鏡検査でもわかりません。

腸漏れの可能性を推測できるのは、IgG検査(遅延型フードアレルギー検査)、ゾヌリン検査(腸壁細胞の間に存在するたんぱく質であるゾヌリンの量を検査)、オーソモレキュラー栄養解析、腸内フローラ検査(便を検査して腸内細菌の種類や数を調べる)などです。これらはすべて自費診療の検査になります。

私たちのクリニックで行っているオーソモレキュラー栄養解析は、「分子整合栄養医学(ぶんしせいごうえいよういがく)」と呼ばれるもので、血液検査によって栄養状態を解析します。

そうして、解析結果の数値を分析し、その人の体の栄養状態を把握することで、必要な栄養素や不足している栄養素を見極め、最適な量を細かく調整しながら補給し、食事や生活習慣を改善して体が本来持っている力を高めていくという栄養補助学ばないかで圧倒的な差が生まれる!

オーソモレキュラー栄養解析では、血液検査で体内のたんぱく質量に関わる数値が低いと「たんぱく質の摂取量が不足しているかもしれない」「腸漏れが起こってたんぱく質がうまく吸収されていないかもしれない」または「アレルギーの原因物質が腸から入り込んでいるかもしれない」と考えます。

いずれの検査も「腸漏れの可能性を推測する」というものなので、受ければ明確な結果がわかるというものではありません。

とはいえ「自分は腸漏れしているのか?」気になりますよね。

そこで、我々が参考にしている腸漏れの危険度チェックを紹介します。生活習慣や食習慣、体調のことなどを振り返りながらチェックしてみてください。

※本稿は、『たんぱく質と腸の新常識: 絶対に漏らしてはいけない 新しい腸活とたんぱく質の正しい摂り方』(Gakken)の一部を再編集したものです。